弐 食欲

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 あてもなく林をさ迷う。  一応、来たであろう道を戻っているのだが、どうも、見たことも無い景色だ。  いや、どこを向いても同じ景色だから覚えられないだけか。 「おっ」  寒さに耐えながらも、少し歩いていると、開けた場所に出た。  建物が建っている。天井の十字架、小さな鐘、教会だろう。  あそこなら誰かがいるかもしれない。そう考えると、自然と駆け足になる。 「すみませーん。誰かいませんかー」  ドンドンと、ノックの音が林に響く。しかし、一向に誰かが出てくる気配はない。  試しに扉を開けてみると、簡単に開いた。
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