弐 食欲

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 バタン。  扉の開く音。  反射的に僕は振り返った。 「あ……え……」  誰かが開けた扉にもたれかかっている。  その姿はとても苦しそうだ。 「はぁ……はぁ……。人……?」  女の子の声だ。とてもか細く、弱弱しい。 「あのっ。大丈夫ですかっ」 「来るなっ! くっ……誰だ、貴様。待ち伏せ……では、ないようだな……」  訳が分からない。待ち伏せ? 何を言っているんだろうか。  彼女は腕を押さえ、ゆっくりとこちらへ向かってくる。時々ふらついており、危なげだ。 「……人間、だな。ここから逃げたほうがいい」  彼女の姿が月明かりに照らされた。
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