弐 食欲

7/10
前へ
/59ページ
次へ
「に、逃げるって……。それに、君はどうするんだい? 傷の手当もしないと」 「私はどうとでもなる。……ほら、あそこだ。あそこから逃げろ」  彼女の指差す先は、割れたステンドグラスだ。あんな高い所、届く訳がない 「む、無理だよ」 「この辺に落ちてる瓦礫でも使って、何とかしてでも逃げろ。早くしないと……」  ジャリッ、と土を踏む音が聞こえた。  同時に、あの臭いが僕を襲った。街で嗅いだ、あの臭い。 「見つけた」  低い声だ。男性の声。  彼女が振り返った。怯えたような、悔しそうな様子で、僕の方へと後ずさる。  また、頭痛がする。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加