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「に、逃げるって……。それに、君はどうするんだい? 傷の手当もしないと」
「私はどうとでもなる。……ほら、あそこだ。あそこから逃げろ」
彼女の指差す先は、割れたステンドグラスだ。あんな高い所、届く訳がない
「む、無理だよ」
「この辺に落ちてる瓦礫でも使って、何とかしてでも逃げろ。早くしないと……」
ジャリッ、と土を踏む音が聞こえた。
同時に、あの臭いが僕を襲った。街で嗅いだ、あの臭い。
「見つけた」
低い声だ。男性の声。
彼女が振り返った。怯えたような、悔しそうな様子で、僕の方へと後ずさる。
また、頭痛がする。
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