弐 食欲

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「まずいな……人間、巻き込んですまない」  彼女の横顔が覗く。その表情は、どこか申し訳なさそうだ。 「おとなしく捕まってもらおう」 「そのつもりはない」  男のシルエットがゆらりと揺れた。  彼女が僕を巻き込んで、後ろへ飛び退いた。床に叩き付けられ「ぐっ」と声が漏れる。  次の瞬間、僕達のいた場所では、男が拳を振り下ろしていた。 「次は外さない」  男は、黒のライダースーツにフルフェイスのヘルメットを被っていた。  体格は普通だが、七、八メートルはあろう距離を一瞬で詰めて来た。異常だ。
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