弐 食欲

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「くそっ、理性が吹っ飛んでやがる。人間、早く、早く逃げるんだっ」  彼女が両手を広げて僕を守る。  その表情は、覚悟に満ちたもので、とても綺麗だ。 「今や、あいつの標的は私ではなく貴様だ。逃げないと死ぬぞっ」  そういえば、街やここでのあの臭い、彼女からは感じられない。いや、逆にいい匂いがする。血と肉の匂い。 「おいっ。なにをして……」  一つ、分かったことがある。  彼女を見たときの、あの思い。  あれは……。
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