参 困惑

3/6
前へ
/59ページ
次へ
「ここまで運ぶのは骨が折れたぞ」  声のする台所の方へと目を向けると、丁度、彼女が出てくるところだった。  彼女の顔を見て、僕はドキリとした。教会では、暗さや血でハッキリとは見えなかったのだが、やはりかわいい。 「む、人の顔をジッと見つめて、どうした」  やばい、ばれた。  慌てて言い訳しようとするも、ひゅーひゅーと空気の漏れる音しか出ない。 「……無理に声を出そうとするな。お前は喉を掻き切られたんだ。もうすぐ治る、それまで休んでろ」  は?  何を言っているんだろうか。喉を掻き切られた? はは、ありえないだろ。  もうすぐ治る? はは、ねーよ。  彼女は、ふーっと疲れた溜息を吐いてソファーに腰掛けた。よく見るとマグカップを持っている。あれ、僕のマグカップじゃん。 「そういえば、シャワーを借りたぞ。あと、包帯もだ。……ああ、ミルクもな」
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加