参 困惑

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「アレは酷く凄惨な光景だった。血を啜る音、肉を咀嚼する音、骨を砕く音。その時の、お前の幸せそうな表情といったら……」 「ま、まて。どういうことだ。喰った? 僕が? あいつを?」 「やれやれ、本当に憶えていないのか。こっちは痛い思いをしたっていうのに」  そう言い、彼女は服をはだけさせて左肩を露出させた。 「お前に喰われた所、相当痛かったぞ」  左肩に巻かれた包帯を外すと、食い千切られた痕がハッキリとあった。  まずい、吐き気が襲ってきた。憶えていない、見たはずもない映像がフラッシュバックする。  男の顔面を殴った時の、鼻の骨が折れる音。  反撃で喉を掻っ切られた時の痛み。  眼球を抉った時のコリッとした感触。  助けてくれと悲願する声。  手に残る心臓の、鼓動。
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