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「アレは酷く凄惨な光景だった。血を啜る音、肉を咀嚼する音、骨を砕く音。その時の、お前の幸せそうな表情といったら……」
「ま、まて。どういうことだ。喰った? 僕が? あいつを?」
「やれやれ、本当に憶えていないのか。こっちは痛い思いをしたっていうのに」
そう言い、彼女は服をはだけさせて左肩を露出させた。
「お前に喰われた所、相当痛かったぞ」
左肩に巻かれた包帯を外すと、食い千切られた痕がハッキリとあった。
まずい、吐き気が襲ってきた。憶えていない、見たはずもない映像がフラッシュバックする。
男の顔面を殴った時の、鼻の骨が折れる音。
反撃で喉を掻っ切られた時の痛み。
眼球を抉った時のコリッとした感触。
助けてくれと悲願する声。
手に残る心臓の、鼓動。
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