参 困惑

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「う……うぐおぇっ」  思わず飛び起きてその場で吐いた。我慢など無理だ。 「うわっ。ばっちい奴だな」  嘔吐物特有のつーんとする嫌な臭いが鼻を刺激する。 「はぁ……はぁ……うっ……」  まだ吐き気は治まらない。無理に動かしたせいで、体中が痛い。 「……ま、まあ、そういうわけで、全部お前がやったんだ」  うるせえ。  僕はやっていない。こんなこと、やっていないぞ。こんなのはあれだ、全部、偽の記憶だ。誰かが、この女が、無理やり植えつけた偽の記憶だ。嘘だ、嘘だ。  僕の吐いたゲロをよく見ろ。人の肉なんてない、血なんて、骨なんて入っていなぞ。入っているわけが……。  目が合った。
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