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「何したか解ってんのかっつってんだろーが!?ああ!?」
ホームに投げ飛ばされ蹲るスーツの男に、尚も怒鳴り続けるヤンキー少年。
これが世に言うオヤジ狩りなるものなのだろうか…
私は好奇心からその場を離れる事が躊躇われ事の顛末を見届けようとしている。
「お、俺は…別に何もしてなグエェ!!」
スーツの男が言い終わる前にヤンキー少年が、スーツの男の腹を蹴り飛ばした。
あれは相当痛いだろうと思う。
「テメー…何もしてないだと…?ふざけんなよ。」
スーツの男を見下ろしながら、放った静かな声は先ほどの怒鳴り声より遥かに怖いな、と思った。
ああ、このおじさん死んだな…
それが私の素直な感想だった。
「おい。何されたか知らんが、もういいだろ。遅刻する。」
ヤンキー少年の後ろから、ふと声が聞こえてきた。
ヤンキー少年の腕を掴む声の主も、私と同じ学校の制服を着ている。
これまた男にしては少々長い髪。しかし痛みのないサラサラとした真っ黒い髪。
鼻のあたりまで伸びた前髪から覗く切れ長な瞳。
背は165cmほどか、私とさほど変らないように思う。
美少女…ではなく美少年。
制服のズボンが無ければ美少女だと間違えていたかもしれない。
「タケル?」
反応のないヤンキー少年に、美少年が呼びかける。
どうやらヤンキー少年はタケルという名前らしい。
「だって…だってコイツが…」
タケルは今にも泣き出しそうな程、顔を歪ませる。
いったい、この頭の寂しいサラリーマンにどれ程の事をされたというのだろうか…
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