害悪退治

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やっとの事で雪の縄も解いた俺は、まだ状況を理解できていないような顔をしている雪の腕を掴み、半ば無理やり立ち上がらせた。 「雪、逃げるぞ!!」 「で、でも、彰がっ……!!!」 「いいから!!俺達がここに残って何ができる!?それとも、雪はアイツの足手まといになりたいか!?俺達がいるせいでアイツが怪我してもいいのか?!」 抗うようにもがいていた雪が、俺のその言葉を聞いてぴたっと動きを止めた。 やっと俺の意図が伝わったのか、雪は完全に納得はしていないようだったが、俺の手を離し、自分の足でしっかりと立った。 俺よりも酷い扱いを受けていたからか、体中が目に見えてボロボロな雪の目が、俺を真っ直ぐと見据える。 「せっかく捕まえたのに、そう簡単に逃がすとでも?」 少しもたついた隙に、こちらに走りよってくる男に気づく。 「そう簡単に行かせるとでも?」 ふいに聞こえた、この場に不似合いな、やけに落ち着き払った鳴海の声の後、男達が一斉に地面に崩れ落ちた。 何が起きたのか理解できずに辺りを見回すと、鳴海の手に握られたトンファーが視界に入った。 …………まさか、あれで……? 「っ……貴方はつくづく僕の邪魔をするのがお好きなようですね……!!」 「……早くお行きなさい」 鳴海の言葉が俺達に向けられたのだと気づくのに、そう時間はかからなかった。
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