害悪退治

14/30
前へ
/473ページ
次へ
「彰ッッッ!!!!!!!」 雪の悲痛な声の後、まず視界に飛び込んできたのは頬から血を流す鳴海の横顔だった。 「……今は外しましたが……僕が本気だとわかっていただけましたよね?」 夏宮の狂ったような笑顔を見て本能的に恐怖を感じ体が震えた。 コイツはダメだ…!置いていったりしたら、鳴海が殺される……!! 何とかして夏宮の注意を引いて鳴海を逃がせないかと頭をフル稼働させる。 だが焦れば焦るほど頭には靄でもかかっているかのようにぼやけて何も考えられない。 「…………何をしているんですか、藤堂さん…………私に何度同じ事を言わせるつもりですか?……早く、お行きなさい」 「な………………んでっ……何で、お前はッッ……」 相変わらず感情の籠っていない鳴海の声に驚きを隠せず問いかける声が震えた。 答えが欲しかった。俺を助けたら生徒会に恩が売れるから、とか。後々この事を使って俺をいいように使うつもりだとか。 何かひどい理由を突きつけてくれれば、俺は安心できるのに。 ああやっぱり鳴海は最低なヤツだって思って、この場からだってすぐに逃げられる。 なのに、何も言わないから。ただ、行け、と……逃げろと言うから。 ……俺達がどうなってもコイツには関係なくて……むしろ嬉しいくらいなはずだ。 だって前に言ったよな?俺達の代わりはいくらでもいるって。いつでもメンバーを変えられるって。 なのに、何で俺を助けるような事をする?俺は、お前に今まであんなにいっぱい…… 「……もう一度だけ言います。早く、ここから立ち去りなさい。貴方達がいたら邪魔なんですよ」 いつまでたっても動く気配のない俺に呆れたような鳴海の声が届いた。 「ッッ…………雪、行くぞ!!」 「待って、陸ッ……彰……彰がっ」 動こうとしない雪の腕をひっ掴み、有無を言わせず走り出した。 この場から逃げる。ただその一心で。 薬がまだ残っているのか、言う事を聞かない足が何度ももつれそうになるけど、構わず走った。 休んでる暇なんかない。廊下を全速力で走り抜ける俺達を不思議そうに見つめる生徒の目も気にせず走る。 目指す場所なんてない。何もわからない。 ただ一つだけわかっているのは、鳴海が俺達を助けてくれたのだという事。 今の俺にできるのは、ただただがむしゃらに走る事だけだった。 ~生徒会会計 藤堂陸side end~
/473ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4324人が本棚に入れています
本棚に追加