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「何をしてるんだ、お前達…?何で……何で早く逃げないんだ!?」
「和樹様を置いて逃げたりするものですか」
訳がわからないといった顔をしている夏宮を見て、コイツは本当に何も見えていないんだと思った。
自分の環境、境遇を嘆くのに精一杯で、周りのヤツらの支えや気遣いなんかに一切気づいていない。
自分の不幸さを嘆くだけでそのくせ何もできない。ただただ悲劇のヒロインぶって自分を慰める………一番嫌いなタイプだな。
「僕がどうなろうがお前達には何も関係ないだろう!だから早く逃げ」
「関係なくありません!!」
声を荒らげた男達に、何も理解できていない夏宮は戸惑ったように銃を持つ手を一瞬だけ震わせた。
「夏宮さん……貴方は何もわかっていません」
「……え?」
「貴方は何も持っていない人間なんかじゃない。誰からも必要とされていない訳でもない。でなければ、彼らがもう存在しない組の当主である貴方に従うはすがないじゃないですか。慈善事業じゃないんです。それなりの理由がなければこんな仕事しないでしょう」
「……それは……」
「………………少なくとも、彼らにとっての貴方は、守るべき大切な人なのでは?」
俺の言葉に驚いたような夏宮が、不安げに瞳を揺らしながら周りを見渡した。
そんな夏宮を男達はただ黙ってじっと見つめる。
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