害悪退治

21/30
前へ
/473ページ
次へ
「……前組長は残虐で恐ろしい方でした…ですが貴方は違う。貴方は優しい人です。ミスをして組長に咎められていた俺達を身を挺して庇ってくれた。行くあてを無くした俺達を、自分が責任を持つからといってお側に置いてくれた。そんな優しい貴方を置いて逃げたりするものですか」 「っ……そんな事……違う……僕は、そんな大層な人間じゃない…!僕がお前達を庇ったのはお前達を使える人間だと思ったからだ。僕がお前達を側に置いたのは自分で自由に使える駒が欲しかったからだ!……だから、そんな風に言ってもらう資格なんて」 「…それでも、貴方が俺達を助けてくれた事に変わりはありません!……俺達は皆あの時誓ったんです……この恩を返すために、例え皆がいなくなっても俺達だけは和樹様のお側にいようと……和樹様を命の限り守り、支え続けようと……!!……俺達では和樹様が求めるような関係にはなれませんか?…確かに年は離れてるし、身分だって違う。でも、貴方が許してくれるなら俺達は……!!」 ずっと戸惑った顔をしていた夏宮の手から銃が滑り落ちる。 そしてそんな事気にもとめず、周囲の男達の顔を順々に見回していき……その言葉が真意である事を知り、顔を歪めた。 そのまま夏宮は崩れるようにして地面に膝をついた。 …………終わったな。 それを合図にするように、漂っていた緊張感はうっすらと消えていった。
/473ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4324人が本棚に入れています
本棚に追加