害悪退治

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「僕の計画は成功して、鳴海様は見事に全身傷だらけ。今だって立ってるのがやっとなんじゃないかな?」 「……別に、そんな事ありません。傷は負いましたがたいした傷では」 「嘘はダメですよ。さっきから歩く時に左足引きずってますよね?」 「……」 何でコイツはこんな……周りで心配そうにしている部下達に目もくれず、自分の罪をさらけ出すような真似をするのか。 自分の罪を重くして何になる?何がしたいんだ?当事者の俺がこれだけ何ともないと言っているのに、だ。 「会長、私は別に何ともありませんから。別に夏宮さんをどうこうしなくて結構です」 「しかし、それは流石に」 「そうです、僕は裁かれるべきです。然るべき場所で然るべき措置を」 「いいえ、結構です。そんな事してもらっても何の意味もありませんから。それで怪我が治るという訳でもありませんし」 「ですが、だからといってこのままでは僕は」 「……わかった、二人とも落ち着け!……夏宮…本当は俺だってお前を警察につきだしてやりたいくらいだ。だが、ソイツらと鳴海に免じてやめておく。……お前は退学だ。……この学校から去れ」 「……はい」 会長の一言を受けて、夏宮が俺の方を見つめるが、俺は視線を返さなかった。しばらくすると、夏宮は踵をかえして出口に向けて歩きだした。 「夏宮、さん……貴方は…」 聞きたい事は山程ある。 何故自分に損しかないとわかりきっているような行動をとるのか、俺は別に平気だと言ったのに何故自ら罪を暴くような真似をしたのか。 あんなに依存していた会長に退学を申し付けられたんだぞ?警察沙汰にはならなかったとはいえ、辛いものじゃないのか? 黙っていればいい。言わなければ停学程度で済んだかもしれない。だが殺人未遂は違う。 だけど質問しようとすると、言葉が喉の奥で溢れ返り、声に出す前に飛散して掻き消える。
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