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「鳴海様……今回、悔しいけど僕は貴方に救われました。貴方がいなかったら、自分が色々な人に支えられていたのだと気づけなかったかもしれません。だからこそ、罪をちゃんと償いたかった、のですが。……僕は卑怯で狡いヤツなので…このまま鳴海様の気持ちに甘えさせていただきます。口では色々言いながら結局行動もできず、本当にすみません…こんな事いくら言っても許されない事はわかっています。…鳴海様にした事を考えると僕は警察に行くべきです。でも、僕は………ごめんなさい。こんな僕で、ごめんなさい」
「……それに関してはいいんです。別に私には貴方が何をしようが関係がありませんし、過ぎた事ですから。……ですが、何故貴方は全てを話したのですか?会長には知られたくなかったのではないですか?」
「……僕が鳴海様にした事は到底許される事ではありません。……それこそ本当に退学では軽すぎる程です。……鳴海様が言っていた事は当たっていたのだと思います。僕は会長様をお慕いしていました。ですがそれは一種の憧れに近いものでした。皆に愛され信頼される会長様に自分を重ね、慰めていたんです。…ああ、何て愚かなんでしょうか。……つくづく僕は最低なヤツですね。…ですが、憧れとはいえ僕の好きな人は会長様です。そんな会長様に全てをお伝えする事が今の僕にとって一番つらい事なんです。……こんな事しかできなくて、申し訳ありません。…………僕は、消えます。鳴海様方の前には二度と現れません。……さよう、なら」
そう言うと夏宮は俺達に背を向けて出口へ向かう。
それを黙って見つめていると、ふいに夏宮がこちらを振り返った。
「…………貴方とは、もっと違う場所で……もっと早くお会いしたかったです。……そしたら、僕は…………」
そこまで呟いた所で、夏宮は徐に口をつぐみ、また出口へ向けて歩きだした。
一瞬、夏宮が俺を見た気がした。
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