害悪退治

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と、いきなり会長が俺を俵でも担ぐかのように抱き直した。 会長が歩くたびに腹の傷口に会長の肩が触れて、息が詰まるような痛みに襲われた。 だが、今度は声を漏らさないように必死に口を手で覆うと、会長がため息をつきながら俺をまたお姫様だっこに抱え直した。 「……何でこの抱き方してるかわかったか?……わかったんだったら黙って抱かれてろ、意地っ張り」 「っ…意地なんて張って」 「じゃあ何でも一人でしようとするな。……お前はもっと他人を頼る事を知れ」 「…………」 俺が黙ると、会長が空いている方の手で俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。 ……本当に馴れ馴れしいなコイツ…… 子どもにするような態度に若干イラッとは来たものの、また何かされたら堪らないので大人しくしておく事にした。 ……怪我さえしてなけりゃ、こんなヤツのいいなりになんかならねぇのに…… 「あーっ、会長ズルいよー!!隊長サンは俺が連れていくからちょーだいっ!」 俺達の側にやってきた佐伯が喚く。会長に運ばれるのもただでさえ苦痛なのにコイツにまで運ばれてたまるか。 「……れ、怜……俺が……」 なぜか顔を赤らめている橘までもが控え目にこちらを見ている。 「……いい。俺が運ぶ」 「いや、怜、ここは俺が抱えるぞ!だから彰を俺に」 「「「「それは無理だろ」」」」 「うっ……な、何だよ、皆して……どうせ俺はチビだよ!!!」 参加する前にバッサリと切られた水嶋が、拗ねたように唇を尖らせた。 まあ、水嶋よりか俺の方が立端あるしな。それに、確かに俺は自分でも細身な方だとは思うが、重さは結構なものだ。 ……つか、こんなに軽々運んでる会長がおかしいんだよな。……何で俺もこんな冷静に分析なんかしてるかな。
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