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そして鳴海彰は私達をひどく嫌っています。それは本人からも伺いましたし。
嫌いなら関わらなければいいんです。少なくとも私はずっとそうしてきました。
嫌いな人を拒絶し、好きな人だけを周りに置く。ああ、何て楽な事なんでしょうか。
でもこの人は違います。私達を嫌っているのに、面と向かって注意をしてくださったんです。
私達はもう少しでとんでもない事をしでかしていたかもしれません。
それを止めてくれたのは間違いなくこの人です。
雪と陸がいなくなった時。闇雲に探す事しかできなかった私達に場所を友人を通して伝え、いち早く助けに行ってくださいました。
怪我をして自分自身はボロボロなのに、最後まで決して弱音は吐かず、二人を逃がす事だけを第一に考えていたんです。
そのせいでもっと傷つき、苦しんだのに。私達に礼を言う隙さえ与えてはくれませんでした。
利益も無しに人を助けるなんて、簡単にできる事じゃありません。私には無理です。
でもこの人はそれをした。それも、嫌っている相手に対してです。
...自分の感情より、他を優先させたんです。
私達の元へ息も絶え絶えに飛び込んできた陸の顔、私は忘れないでしょう。
誰よりも鳴海彰を嫌っていた陸がぐしゃぐしゃになった顔で、鳴海彰が死ぬ、助けてくれ、と叫んでいたんです。
陸がそこまで必死になって助けを求めに来た事は、私達にとっては言いようもないほどの驚きでした。
陸は、良くも悪くも白黒ハッキリしているタイプで、一度受け入れないと決めたものに対しては絶対に心を開かないんです。
...そんな陸をそこまでさせた事。...この人は何て......すごい、人なんだと思いました。
……こんな人も、いるんですね。
私はムスッとした顔で私達を見つめる鳴海彰を見て、また笑ってしまいました。
~副会長 行永茜side end~
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