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ガキに不覚にも見とれていた俺は、落ち着いてガキの言葉を反芻して、やっと気づいた。
「…違う!!……動けねぇ……いや、動く気がないだけだ」
我ながら意味がわからない返答だった。変な答え方をした俺を、ガキがまじまじと見つめる。
頭の先から爪先まで、まるで値踏みをしているような視線だ。全てが見透かされているみたいで居心地が悪い。
「……何だよ。見てんじゃねぇよ」
「……お前が銀狼とかいうヤツか」
俺の髪が銀色だかららしいが、知らない内につけられた通り名。
顔から火が出るかと思った。改めて声に出されると、ダメージがでけぇ……!それも、初対面のガキになんかに……!!
俺の無言を肯定と見なしたのか、それ以上何も聞いてこない。代わりに。また黙って俺を見つめ出した。
「…………だから、何なんだよ」
「怪我、どうすんだ」
「はあ?……こんなモン掠り傷……っ……てぇ…!!!」
強がって腕を思い切り振り上げたら、途端に鋭い痛みが走った。
あー……こりゃあ、腕もイってるな……っ、畜生……滅茶苦茶にやりやがって……
痛みに思わず顔をしかめながら、悶絶する俺を黙って見ていたガキがいきなり至極面倒そうにため息をついた。
かと思えば踵を返し、もと来た道を戻り始めた。
「……ついてこい」
「……ついてこいって、何…」
「いいから大人しく黙ってついてこいってんだよ、オッサン」
「お、オッサン!?……俺はまだ22だぞ!……て、オイっ……」
それ以上何も言わず振り返りもしないガキに何故かついていかなきゃいけない気がして、重たい体を気力だけで何とか起こしついていった。
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