伏兵参上

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しばらくガキについていくと、昔ながらの日本家屋って感じの豪邸にたどり着いた。 表札には達筆な文字で「鳴海」と書かれていた。……どっかで聞いたような… 何だこのガキ……もしかしてとんでもない金持ちなのか? そんな俺の戸惑いを他所に、ガキはスタスタとその豪邸に入っていく。 動けずにいる俺に目もくれず中に入ったガキは、しばらく進んでからこちらを振り返り、何をしてる早く入れと言わんばかりの目で俺を見つめた。 恐る恐る中に入ると、さながら老舗旅館みたいで……ウチとは全く違う落ち着きのある和風な室内に何だか安心する。 「……何キョロキョロしてんだ。こっち来い」 キョロキョロと世話しなく中を見回す俺を見て、ガキは呆れたような声で俺に声をかけた。 大人しくついていくと、綺麗な座敷に通された。 そこで今更ながら気づく。…俺、さっきまでゴミ捨て場にいたし、全身血塗れだし……こんな所入ったら汚しちまう……よな。 中々入らず悶々としている俺に、今度は何だといった視線を向けてくる。 「いや……今更だけど、俺……その、色々汚れてるから、部屋……汚れるんじゃないか?」 「……そんな細かい事気にしてんな。アンタ、早くその裂けてる腹治療しないと浅めでも膿んだりすると厄介だぞ。部屋は掃除すりゃ何にでもなる。変な心配してねぇでとっとと入れ」 「……悪い」 「悪いと思うなら早くしろ。無理やり入れられたいか」 「………わかったって」 言い方は好意的じゃないが、コイツはコイツなりに俺の怪我を心配してくれてる……んだよな。
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