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ガキの向かい側に座ると、救急箱を取り出し治療をしてくれる。
手つきはテキパキと手際がいい……んだが、不器用なのか巻かれた包帯が頼りない。
でも本人は至って真面目にしてくれているらしく、何だかおかしくて笑ってしまった。
「……んだよ、何笑ってんだ」
「…………いや、見た目や言動に反して意外に不器用なんだなと思ってな」
俺の言葉にわかっていないようにきょとんとしていたが、しばらくして俺の傷口に巻かれた包帯を見て理解したのか、むすっとした顔をしていた。
「……不器用で悪かったな。俺はアンタみたいに怪我するようなヘマしないから慣れてないんだよ」
その妙に不機嫌そうな顔や言い訳じみた言い方が何だかおかしくてまた笑ったら、ますますむすっとされた。
「……ふ……」
「………………」
「っいってぇ!!!!」
思わず吹き出したらいきなり傷口に巻かれた包帯を思い切り引っ張られた。
傷口に包帯が擦れて、あまりの痛みに叫ぶかと思った。いや、叫んだけど。
「……っにすんだよ…………いてぇだろ…うが」
「調子に乗ってるからだ、バカ」
恨めしげに睨み付ける俺を見て満足げに笑うガキのその年相応の顔に、こんな顔もできたのかと驚いた。
と、同時に何だか形容し難い気持ちになって思わず首をひねった。……何だ、この感じ……
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