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しばらくして出ていった鳴海が帰ってきた。先程のやり取りは嘘だったかのように澄ました顔をしている。
「……アンタの家に連絡入れたら、アンタをしばらく預かってほしいとの事だ。社会勉強してこいってさ。俺達もちょうど小間使いが欲しかったし」
「ああ、そう……って、ちょっと待て、今何て!?俺が、しばらくここに!?つうか、家に連絡……まさか父さんが!?」
「アンタの親父かは知らないが、男だったな。とりあえず怪我が治るまではいろ。治ったら帰れ」
「……待てよ、嘘だろ……社会勉強?…………はは、流石だな、あの親父……息子を極道に預けるか、普通……」
「まあ、俺の家とアンタの家は懇意にしてる方だしな。アンタの親父は俺の親父の飲み仲間だし」
「はあ!?…………そうか……俺は偉そうな事を言いながら、親父の事……家の事……何も知らなかったんだな」
「……これから知っていけばいいだろ」
「…………そうだな」
不思議と体が軽くなった気がした。鬱々とした気分が晴れ、久々に肩が軽い。
「……で、ここにいるのか、帰るか。アンタはどうしたいんだ」
「…………もう少し、いさせてくれ。どっちみち今の姿じゃ父さんには顔向けできない。……し、もう少し自分を見つめ直す時間が欲しい」
「……ていう事は、小間使い上等って事だな?」
「……ああ」
「……こき使ってやるから覚悟しろよ」
「……こき使われてやるから覚悟しろよ」
「…………何だそれ」
鳴海が微かに笑ったのを見て、俺も笑った。
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