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「……昔、若がもう少し幼い頃に盃を交わさせていただいたんです。義兄弟の盃を」
「ほとんど無理やりだけどな。俺は家は継がねぇから無意味だって散々言ったし」
「そんな事関係ないです。俺が生涯お側にいたいと思うのは、今も昔も若お一人。俺が仕えているのは、鳴海彰というお方であって、鳴海組ではありません。若の為ならこの命尽きるまでお側に」
「…………相変わらず重たいヤツだな」
八雲を組に引き入れたのは俺だ。実は八雲も昔は名のある極道に所属していた。組長の9人の子どもの末子だったが故若頭候補になる事もなく、鉄砲玉のような扱いを受けていた。
だが、交戦の最中瀕死になっている所をたまたま拾って以来、俺に仕えている。
家はいいのかと尋ねたら、縁を切られたらしい。役に立たない人間は例え血の繋がった息子であろうと切り捨てられるのだと告げる八雲は少し悲しげな顔をしていた。
だがそれにしても事あるごとに若、若と騒々しい。そんなに柔じゃないつもりだ。
「……盃とか家とか…………彰ってやっぱり……いやダメダメ!彰に話してもらうまで深追いはしない!!」
「……真樹?何か…」
「何にもないよん!それより良かったな、八雲!彰と同じクラス!」
「はい!!嬉しくて俺……涙が止まりません!!」
そう言う八雲の目には確かに涙が溢れている。……やっぱりコイツ大袈裟だな。
「……お前、年はどうする?誤魔化すにしても、履歴書とか」
「それはご安心ください!!戸籍なんて組長にかかれば簡単なモンっスよ!!」
ちょっと待て。それは誇らしげに言う所じゃない。
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