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すると俺の言葉を信じたのか、恐る恐るといったように俺からコーヒーを受け取る。
そしてしばらくコーヒーを苦しげに見つめ、意を決したようにぐいっと一気に飲んだ。
「う、ええっ!!に、苦ッ!!!」
本当に苦いモノはダメなのか、苦しそうにむせている。
「そうですか?私は美味しいと思いますが」
「鳴海はおかしい.........砂糖を入れなければこんなのただの黒い苦い水だ.........飲めたものじゃない.........」
恨めしげにこちらを見つめつつ、ぶつぶつと呟く橘。目尻にはうっすらと涙が浮かんでいる。そんなに不味かったのか。
「っふ.........はは.........た、ただの黒い苦い水って.........ふふっ.........橘さん、面白い事を言いますね.........」
思わず笑ってしまった。だって生徒会にいるような金持ちがコーヒーをただの黒い苦い水って.........
「.........鳴海.........お前.........」
「.........はは.................ん?何ですか?」
散々笑い終えた俺をじっと見つめる橘の視線に気付き、俺は見つめ返した。
「.........お前.........笑うと.........」
「?.........何ですか?」
「.........あ、いや.........何でもない.........」
するとまた顔を伏せる橘。何だよ?俺何か怒らせるような事したか?
「どうしたんですか.........?.........もしかして、笑った事怒ってます?」
「いや、そういう訳じゃ.................ただ、鳴海の笑った顔が.................い、いや、やっぱり何でもない.........し、仕事も終わったし、もう遅いから帰ろう」
「はあ.........ま、いいです。では帰りましょうか」
やけに慌てたように立ち上がる橘に続くようにして俺も軽く身の回りを整えた。
そして学園までの帰路についた。
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