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保健室から寮までの道のりを橘と並んで歩く。
……そういえば、橘と会ったのは久々だな。……つうか、何で一緒に帰ってるんだ?
「……橘さん 」
「…………っあ、な、鳴海……ど、どうした……?」
保健室を出てから橘はずっとこの調子で、どこか上の空なまま黙りこくっている。
……流石に目の前で教師に殴りかかったのは不味かったか?橘は真面目だからな……
「あのですね、橘さん。如月先生の事ですが」
「い、いや、いい。き、聞きたくない……い、今、聞いたら……きっと、まともじゃ、いられない……や、やめてくれ……」
まともじゃいられない?……そんなに動揺してんのか?教師相手には絶対服従するタイプなのか?
……保険医が悪かったのは明白だが、橘が誰かに言いつけたりしたら面倒だな。
「……あの、橘さん。保健室での事は」
「た、他言無用……か?」
「はい。すみませんが、よろしくお願いします」
「ああ。……口止めをするって、事は……つまり、これは、本当、の、事……?……鳴海、は……」
橘は何かをぶつぶつと呟き、また黙りこんでしまう。
……何にそんなにショックを受けているんだ?俺が教師にも手を出した事がそんなに許せないのか?
「……あの、な、鳴海……お前は、その……如月先生を、どう思ってる……?」
「如月先生をですか?……そうですね…性格はいけすかないしセクハラばかりしてくるしで、まともな教師ではないかと」
「……他には?」
「……うーん…………まともでは、ない、ですが……怪我の手当てや精神的なケアなどにはとても長けている人だと思います。人の感情の機微にも聡い方ですし……だから…………保険医としては、いい先生……なのではないでしょうか?」
「そ、そう、か……」
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