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いつまでも上の空な橘を不思議に思い、俺は橘の顔を覗き込んだ。
そんな俺の行動に驚いたのか、橘はものすごい勢いで後ろに反り返った。
その拍子にバランスを崩した橘が、スローモーションのように後ろに倒れていくのが見えた。
「!!……橘さん、危ないっ……!!!!」
咄嗟に橘の手を掴み引き留めたが、反動で俺はそのまま橘の胸に飛び込んでしまった。
すると、倒れかけていたはずの橘が持ち直し、更にはいきなり飛び込んできた俺をしっかりと抱きとめてさえ見せた。
完全に一緒に倒れ込んでしまうと思っていた俺は、何とか助かったようだと気づいて、数秒遅れてほっと息をついた。
「す、みま、せ……助けるつもりが、迷惑を……」
「いや、鳴海は悪くない……俺を助けようとしてくれたんだろう……すまない」
「いえ………ぼーっとしてるなんて、橘さんらしくないです。どうかしたんですか?先程からずっと上の空です」
「あぁ…………その………………ダメだ……黙っていようかと思ったが、無理、みたいだ…………た……単刀直入に聞こう」
「何ですか?…………って、そうだ、そろそろ離してくださって結構ですよ。もう自分で立てますから」
「な、鳴海…………き……き…………如月、先生と…………まっ………ま、枕を、か、かかかか、交わした、のか……?」
「……………………………………はい?」
突然の予期せぬ問いかけに一瞬思考が停止する。……俺が、保険医と……?……つうか、枕を交わすって表現古くないか?
「………………じゃない!!!!!!!な、何でそうなるんですか!!?わっ、私があの人と!?ありえません、考えたくもない!!!!」
「!!……じ、じゃあ、二人の間には何もなかったのか……?」
驚いたような橘に開いた口が塞がらない。よりにもよって何でそういう事になる?!
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