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「……俺が甘党だと、覚えていてくれたのか?」
「…え?……はい…………えっと、あの……何か変な事でも……?」
「い、いや、違うっ!!……そうじゃなくて……その…逆だ。覚えていてくれて、嬉しいんだ…………ありがとう、鳴海。……とても美味しい」
「……あ、は、はぁ……」
……?……そんなにミルクティーが好きだったのか......こんなに喜ぶなんてな……
「……鳴海のは、ストレートか?」
「ええ。ストレートです」
「ストレートか。……鳴海は大人だな……俺には無理だ…」
「ふふ………紅茶がストレートで飲めたら大人ですか……じゃあ、橘さんはしばらく子どものままかもしれませんね」
橘の言い分が面白くてついつい笑ってしまう。何か、ブラックコーヒーが飲めたらカッコいいと思っている子どもみたいだ。
ふと視線を感じて橘の方を向くと、橘が俺を何だか微笑ましげな顔で見つめている。
「……鳴海は、変わったな」
「…………え、私が、ですか…?」
「ああ。何というか……うまくは言えないが、出会った当初より、雰囲気が少し柔らかくなったように思う」
「そう…ですか?」
「以前の鳴海なら、俺や……他人を部屋にあげたりしなかっただろう。今回は俺を気遣ってくれたんだろうが……しかし、送りに来たはずが逆にこんなに手厚くもてなされて……何だか悪い事をしたな」
図星を突かれて一瞬ビクついてしまう。……前の俺なら、他人を部屋にあげなかっただろうって?
……………………そんなの当たり前だ。
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