新発見

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「ええ……」 「そう、か……そう、なのか……」 急に語尾が上がった橘をまじまじと見つめる。生真面目な顔に微かに笑みが浮かんでいるように見える。 「…………橘さん、理由はわからないのですが……勘違いでしたらすみません。もしかして、何だか喜んでますか……?」 「ああ、とても。…鳴海のお陰でな。…………こんな事を言うのはあまり誉められた事ではないだろうが、生徒会の中で一番……というのがとても嬉しいんだ」 「……そうですか?橘さんが一番話しやすいというのは私だけではなく皆さんが同じ意見だと思いますが……橘さんは物腰も柔らかくて謙虚なので好感が持てますし…私の事を、噂を鵜呑みにせず接してくれたのは橘さんだけですし………少し柄ではない事を言いますが、嬉しかったです。噂ではなく、私自身を見ようとしてくださって。……だから、私は…………ん、むっ…」 話している最中だというのに、いきなり橘に口を塞がれて驚く。思わず手に噛みつくかと思った。……何だ?何で口を塞がれて……? 「……す、すまない、とても失礼な事をしているというのは重々理解している……だが……これ以上…………俺は、自分を保てる自信がない……っ……」 もう片方の手で自分の顔を隠すように覆う橘の指の隙間から微かに覗く顔は真っ赤に染まっていた。 ………………赤面する理由が見当たらない。あがり症か何かか?……いやバカか。 「……鳴海の言葉はいつも真っ直ぐで……心にもいつも真っ直ぐに届く…………だから、俺は……こんな……」 「…………んっ、ふ……」 ……このままではしばらく口を塞がれそうだったので、息苦しいから外せという意味を込めて、俺の口を塞ぐ橘の手を軽く何度か叩いた。 すると橘は慌てたように俺の口を塞いでいた手を引っ込めた。
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