不可解暗躍

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しばらく笑っていた会長が、急に静かになる。そしていつもよりもどことなく柔らかく笑った。 「貴様に対する印象が少し変わったな。案外気に入った」 「.........たった少し語ったくらいでですか?.........私の噂、知っているでしょう?だから貴方は私の事を嫌っていたのではないですか。.........それを覆すとでも?」 「.........確かに、嫌いだった。貴様の悪い噂は嫌でも耳に入るからな」 「では気に入ったというのはおかしいでしょう」 「まあ、生徒会は皆貴様を嫌っているな。.........だが今はそれ以上に、貴様の事をもっとよく知りたいという感情が湧いてきていてな.........止められそうにない」 「.........はあ?」 会長の不可解な言葉の意味が理解できず、思わず首を傾げた。 「中々面白い発言をするし、親衛隊隊長という立場でありながら俺を嫌いだと明言するのも新鮮だ。それもさっきからその不愉快そうな顔.........面白いな。.........今となっては貴様の噂がすべて本当だとは思わない。今は少し違うように感じる」 .........コイツは一体何を根拠にそんな事ぬかしてんだ.................? 「貴様は俺の事が好きすぎて、俺に近づくヤツに制裁を下したり、俺に似た男をとっかえひっかえして夜な夜な遊んでいると聞いていた。.........だが俺の事が嫌いならそんな事一つもする必要はない.........違うか?」 .........確かにそうだが.........よくその結論に至ったな。てか仮にもずっと自分の事好きだと思っていた人間から面と向かって嫌いだって言われてんのに動じねえの逆に怖いな。 「そうですね.........ですが、会長は私がそれを肯定したからと言って信じるのですか?学園の生徒達のほとんどが私について語る噂を信じず、私を信じるとでも?」 そう尋ねると会長は押し黙る。.........ほらな、信じられないんだろ? 「確かに簡単に信じられはしない。今までそうなんだと信じていた訳だし.................だがそれ以上に信じたいと思う俺がいるのも事実だ」 .........信じられないけど、信じたい.........だと?.........会長が、俺を? まさか、そんな訳がない。人の印象は悪くなるのは一瞬だが、良くなる方の場合は長くかかる。 なのに今少し話しただけで.........?.........そんな虫のいい話があるか。
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