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そしてそのまま校内を徘徊していると、ぱたぱたと世話しなく走っている橘を見かけた。
「あ、橘さん」
「……ん?ああ、鳴海か。こんな所で何を?」
「いえ、特に用事は。それよりも橘さんこそ何故そんなに忙しそうにしていらっしゃるんですか?まさかまた仕事が?」
「いや、仕事は今は大丈夫だ。……何故かはわからないが、昨日から怜が手伝ってくれはじめてな」
「...会長が?」
「ああ。他のヤツらは相変わらず転校生に構いっぱなしだが、怜は何だか興味を無くしたらしい。そもそも怜は最初からあまり転校生に執着していたようではなかったしな」
あまり執着してなくてもキスはするのか。つか興味を無くした?...何故?
「ならば今は何をしていらっしゃったんですか?」
「いや...もうすぐ新歓の時期だろう?だからその準備でな」
新歓……新入生歓迎会か。…………この時期浮かれるヤツが増えるから面倒なんだよな……
「なるほど……ですが、無理はしないようにしてくださいね。大変でしょうが、頑張ってください」
「........え?」
いきなり橘が変な声を出すから一瞬驚いて見つめてしまった。
「……私、何か変な事言いましたか?」
流石に理由がわからなかったので素直に橘に尋ねた。しばらくポカンとしていた橘だったが、俺の質問に気づいたのか急に微かに顔を赤らめる。
「あ、いや……鳴海にそんな事言ってもらえるとは思っていなかったから…………それに、頑張れ、と言ってもらったのは、初めてだから…………その、ありがとう」
そう言って橘は少し照れ臭そうに微笑んだ。……確かに俺も頑張れとか言ったの久々な気がするな。
「…では、また。鳴海も体には気をつけて」
「ありがとうございます」
そして橘は去っていった。体には気をつけて、か……この学園来て初めて言われた気がする。
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