日常微変化

11/32

4323人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
「…まあ、いい……今日ここに来たのは鳴海に絡むためじゃない」 それなら何で絡んできてんだよてめぇは。と、思わず素でツッコミそうになるのをぐっと堪えた。 するといきなり何を思ったのか、会長が俺に向かって頭を下げてきた。 その途端、騒がしかった学食内がしん……と静まり返り、辺りから痛いほどの視線が突き刺さるのを感じた。 「……何のつもりです?」 俺は予想外の奇行にでた会長を警戒しつつ、声をかけた。 「……俺が疎かにしていた仕事を橘と鳴海がしてくれたと橘から聞いた。……今こんな事を言っても無駄だとわかっている。……でもどうしても一言言わせてほしい」 そこまで言った会長がまた更に一段と頭を深く下げた。 「すまなかった。学園のトップともあろう俺が一個人にうつつを抜かし、仕事を疎かにするなどあってはいけない事だった。今後二度とこのような事は起こさない。本当にすまなかった。……それと、ありがとう」 会長の予想外の言葉に思わず目を見張る。……コイツ今何て言った?すまない?ありがとう?……コイツが、俺に? いつも腹立つくらい尊大な態度のコイツが……こんな大勢の前で、評判の悪い親衛隊隊長である俺に頭を下げるなんてありえない。 未だにショックから抜け出せず言葉を発する事のできない俺を、相当根に持っているとでも思ったのか、会長が一瞬肩を小さく揺らした。 「……こんな事言ったくらいで許してもらおうだなんて甘い事考えちゃいない。…ただ…これからの俺の態度でわかってほしい。俺はこれから前以上に励むつもりだ…だから」 「……会長がわさわざここに来たのは……それを私に伝えるためですか…?」 「……そうだ。……なのにいきなり失礼な態度を取ってすまなかった」 「……………………もう、いいです」 「…………え?」 俺の言葉に呆けた顔をした会長が顔をあげた。
/472ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4323人が本棚に入れています
本棚に追加