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「……私は別に気にしていません。会長がこれから改めてくださるのでしたら言う事も別段有りませんし」
「……だ、だが」
「私がいいと言ったらいいんですよ。確かに会長が仕事を疎かにしていると聞いた時は腹が立ちましたが、こうして謝罪までしていただきましたし……それに生徒会の仕事に触れられたのは私にとってもいい経験になりましたし」
俺の口をついて出たのは普段なら絶対に言わないような言葉。でも一度口を開いてしまったらもう止まらない。
「……ただ、橘さんにはしっかり謝罪した後、今のように誠心誠意感謝してください。今回一番苦労したのは橘さんでしょうし……私が手伝ったのはごく一部です。……あんないい人中々いませんよ」
「……む、無論そのつもりだ……あ、いや……わ、わかった」
「でしたら、もう用はないでしょう。お帰りください」
「……鳴海…」
「…まだ何か?」
「……鳴海を……よく知りもせずに酷い事を言ったりしてすまなかった」
「わかってくださったなら結構です。それに腹立たしい事に、会長にそういう誤解を与えた責任は私にもありますしね」
俺が自嘲的な笑みを浮かべながらそう言うと、会長が驚いたような顔をした。
そんな噂が広まりかけた時点で、否定する事もせず、ただ諦めてそのまま放置したのは他でもないこの俺自身だ。
確かに否定しても無意味だっただろう事は一目瞭然だったが、俺にはその噂を否定しなければと思う理由が特に無かったから。
だから、今さら否定する気もさらっさらない。
誤解されて困る相手はいないし、これから作る気もない。
他のヤツらにどう思われようが関係ない。俺の価値を決めるのは他の誰でもなく俺自身だ。他人の見解なんて迷惑なだけだ。
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