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「私がいいと言ったらいいんですよ。確かに会長が仕事を疎かにしていると橘さんに聞いた時は腹が立ちましたが、こうして謝罪してくれましたし…それに生徒会の仕事に触れられたのは私にとってもいい経験になりましたし」
いつもとは違う、少し穏やかな顔をする鳴海に、一瞬戸惑う。
「…ただ、橘さんにはしっかり謝罪した後、今のように誠心誠意お詫びをしてください…今回一番苦労したのは橘さんでしょうし……あんないい人中々いませんよ」
そう言う鳴海の顔はやはりどことなく優しげに見えて、自分でも驚くくらいに狼狽えている気がする。
「…………む、無論そのつもりだ……あ、いや…わ、わかった…」
「でしたら、もう用はないでしょう…お帰りください」
そう言われたものの、心の中に残る言葉にできないわだかまり。
言葉にしなきゃダメだと思うのに、いざ口に出そうとすると上手くまとめられねぇ。……クソ、何だってこんなにもやもやすんだよ。
「………鳴海…」
そんな自分が歯痒くて、思わず鳴海の名前を呼ぶ。
「…まだ何か?」
俺を見つめる鳴海の顔を見ている内に、段々と言いたい事が出てきた。
「……鳴海を…よく知りもせず、酷い事を言ったりしてすまなかった」
やっと告げたのはまたもや謝罪の言葉。……何だか謝ってばかりだな。……情けねぇ。
「わかってくださったならそれで結構です。それに、腹立たしい事にも会長にそういう誤解を与えた責任は私にもありますしね」
そう言って鳴海が浮かべた自嘲気味な笑みに、ひどく胸が締め付けられるような錯覚に襲われた。
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