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「…会長?一体何を」
何も喋らない俺を不審に思ったような鳴海の声が聞こえた瞬間、俺の口は勝手に動いていた。
「…お前ら…ここにいる親衛隊隊長の鳴海にまつわる噂は全部デタラメだ。俺が保証する。…だから…今後鳴海に対して何か言ってみろ…俺の持ち得る金とコネでソイツを潰してやる…覚悟しとけ!!!」
それだけ叫ぶと、鳴海の顔を一瞥して何も言わずにその場を後にした。
廊下を足早に歩きつつ、さっきの事を思い出す。
本当は謝罪しに行ったのに、思わず鳴海を怒らせるような事を言ってしまったり。
俺の言葉にいちいち反応する鳴海が面白くて、つい調子にのった。
鳴海のあんな反応や先ほど見せた儚い顔も全部初めて見たものだったから。
そんな表情が見られた事が新鮮で、新しい鳴海をどんどん知っていってるみたいで嬉しくて。
だからだ。全校生徒の前で、あんな、らしくねぇ事しちまったのは。
……アイツら、俺が鳴海を殺したいぐらい嫌ってるって思ってただろうから、驚いただろうな。
なんて考えると、少し笑っちまった。俺だって鳴海相手にあんな風に接する日が来るなんざ思ってなかった。
鳴海を見てると、心臓が締め付けられてるみたいな錯覚に襲われる。
それに、胸の中がもやもやするのに、すっきりしていて、どこか心地いい。
そんなよくわからない感情が俺の心の中をぐるぐると渦巻く。
未だに整理のつかないこの胸のもやもや。だが、不思議と不快じゃない。…………いや、むしろこれは……
こんな気持ち、初めてだ。……このもやもやを知っているような気がするが、言葉では言い表せない。…俺は、この感情を知らない?
……まあ、いい。きっといつか何とかなる。時間が経てば、この気持ちの正体もわかんだろ。
そう思う事にした俺はもやもやを抱えたまま、何故か行きよりもいくらか軽くなった足取りで生徒会室に向かった。
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