4323人が本棚に入れています
本棚に追加
/472ページ
~親衛隊隊長鳴海彰side~
会長が学食から去ってしばらく経ち、俺はいつものように屋上に来ていた。
前日会長のせいで眠れなかったため、眠気が襲って来る。
フェンスに寄りかかり気を抜くと、今にも閉じてしまいそうな瞼に必死に抗う。
春独特のこの形容しがたい、えもいわれぬふわふわとした日和。
眠くなって当然だ。……その上、俺は寝不足だからな。
そのまま俺が抵抗するのを諦め、次第にまどろみに意識をとらわれかけていた時。
「……い……………み!!」
声が聞こえた。あまり耳慣れない声に、一体誰かと薄れ行く意識の中考えた。
そしてその声の主の正体に気づいた途端、意識が一気に現実に戻ってくるのを感じた。
「…………聞いてんのかよ、てめぇ」
「……………藤堂…さん?」
会計の藤堂陸だった。普段なら転校生に付き従っているはずだ。だが、今藤堂は俺を不機嫌そうな顔で見下ろしている。
「…………何かご用でも?」
安らぎの一時を邪魔された上に相手が相手なので、俺の声も自然と不機嫌なものになる。
「惚けんな!!怜に何をした!?さっき、お前に頭下げてだろ!!お前、怜に一体何をしやがった!!」
…………ちょっと待て、それはおかしくないか。
頭を下げてたのがあっちなら、何かしたのもあっちに決まってんだろうが。何なんだよコイツバカなのか?
「……私は何もしていませんが」
「……じゃあ、何で怜がお前なんかに頭下げるんだよ」
「知りません。会長の考えなんて知らないし、知りたくもないので。時間の無駄なので、下らない会話をもちかけないでいただけませんか」
俺の事を散々嫌いだと罵っておきながら、気に入ったと言ってきたり、変な事をしてきたり。
それにさっきの謝罪。訳がわからない。会長は何がしたいんだ。俺に何を求めてんだ。
今さら、俺に利用価値があるとみなし、取り入ろうとしている?……ダメだ、考えれば考えるほどますますわからない。
会長の不可解な言動に大分参っていた俺は、つい藤堂に本音を漏らした。
最初のコメントを投稿しよう!