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そのうち仕事も全くしなくなって、俺達の分の仕事を綾乃クンが一人でしてるのも知ってたけど、知らないフリをしてた。
雪ちゃんを可愛がる皆に交じって、思ってもない事を口にする。
自分がまったく思ってない事を口にするのは結構疲れるんだなって改めてわかったよ。
そうやって意味も何も無い毎日をだらだら過ごしてた。これから先もずっとそんな日が続くんだって思ってた。
でもそんな俺の日常を、隊長サンが壊してくれた。
初めてだったんだ。人に叱られたのは。間違いを正そうとしてくれる人に会ったのは。
俺が嫌いだって面と向かって言ってくれたのも、全部全部隊長サンが初めてだよ。
俺を家柄や容姿だけで判断しないで、ちゃんと俺自身を見てくれる人。
俺にたくさんの初めてをくれた人。
......聞いた事あるんだ。どうでもいい相手を、人は叱ったりしないって。
その人なら直せる、直る余地がある...って信じてるから叱るんだって。
だったら、隊長サンは、俺の事、完全に諦めた訳じゃないって事だよね?ちょっとポジティブ過ぎかもだけど......何も言わずに役員を交代させる事も出来るのに、隊長サンはそれをしなかったんだから。
変えられたくなきゃ、仕事しろって、言ってくれた。......挽回のチャンスを、くれたんだ。
何もしてない、何も出来ていない俺にも、可能性をくれたんだ。......俺に、期待してくれた、って......思ってもいいよね?
俺が生徒会だから、佐伯グループの息子だからって、俺の行いを咎めず許し続けた皆とは違う。
俺の家柄や容姿に惑わされず、本質を見て、ハッキリと意思表示をしてくれる人がいたんだなって。
俺の顔色を窺ったり、意味の無い称賛の言葉の羅列を言ったりしないでいてくれる人がいたんだなって。
怒られたのにこんな風に考えてるのは不謹慎だよね。でも、素直に嬉しかったんだ。
……ねぇ、隊長サン。俺が今から変われたら……次は、好きだって言ってくれる?
好き、は難しくても、正しい事をしたら見直してくれる?頑張ったねっていっぱいいっぱい誉めてくれる?
…もし、君が俺を少しでも好きになってくれるなら、俺は、今俺が持ってるモノを全部かなぐり捨ててでも、君が望むような人になってみせる。
きっとだよ、約束する。
だから、その時はーー。
~生徒会会計 佐伯那都side end~
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