4323人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば以前真樹が、私のクラスの一部が水嶋さんを狙っているとか何とか言っていましたが……」
「真樹……ああ、鳴海のそばにいつもいるアイツか。……しかし、やはり鳴海のクラスでもか……あの元毛玉が好きなヤツが大勢いると考えるだけで恐ろしい限りだな」
そう言いながら久我は水嶋を思い浮かべたのか、ぶるりと身震いした。
「……まさか久我さんも水嶋さんに接触されたのですか?」
「転校してきたばかりの時に少しな……転校生なんてこの学園では珍しいから、たまたま廊下ですれ違った時に挨拶しただけだが……何故か真っ赤な顔で風紀委員が風紀を乱すなとか怒鳴り散らされてな。かと思えば、顔を合わせるたびに友達になれと迫られてな……理解できない」
……それは……水嶋がそんな事言うって事は……久我がまた持ち前のあの異様な色気でもぶちまけたに違いないだろうな。
「…………どうした、鳴海?」
「いえ。ただ、それは仕方がない事なのではと思っただけです」
俺がそう言うと、久我はしばらく考えるような仕草をした後、結局わからなかったらしく、物憂げに吐息を漏らした。……言ってるそばからか……
「……まあ、私のクラスで不穏な動きがないか再度確認しておきます。もし何かあった際には報告してさしあげますよ。……では、私はこれで」
食事を終えて、これ以上長居する理由が無くなったので、席を立ち上がり出口へと歩きだした。
「ああ。……今日は鳴海のお陰で有意義な時間が過ごせた。礼を言おう。……また機会があったら、こうして話がしたい。……いいか?」
「お断りします」
「…即答か……鳴海らしいな…では、勝手に話しかける事にしよう」
「……話しかけられても無言で流しますからね…………では」
そして俺は見送るように小さく手を挙げた久我を一瞥してから、何も返さずに久我に背を向け学食から出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!