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そう思った時には体はもう動いていて。
車の前に走り込み子どもを抱き抱えた瞬間、体中に半端ない衝撃が走った。
息が、詰まる。全身の機能が今にも停止しそうだった。
そのまま俺は車にはねられて、子どもを抱えたまま車の上を転がって、地面に思い切り叩きつけられた。
身動きができなかった。……いっ……てぇ……
しばらくすると腕の中にいた子どもが身じろぎをした。力を振り絞って腕を外し子どもを解放する。
「……大、丈夫…か…?……怪我は……」
「?……今、何があったの?...体がぶわぁーって......それでゴンッて.........痛いよ......何で......」
何が起こったのかわからないというような子どもの顔に、思わず目を見張った。...本気で状況を把握できてないのかコイツ?
「....とりあえず大きな怪我はねぇんだな.............ってぇ....!!」
「......お兄ちゃんも痛いの?何で...?」
「......うるせぇ。お前がいなきゃ怪我してねえよ」
「僕のせい...?お兄ちゃん僕のせいで痛いの?......ふ、ふぇえ.........」
今にも泣きだしそうな顔をした子どもを見てぎょっとする。...待て、大きな怪我も無かったのに何で泣く?
「......お前......何......本当はどっかすげえ痛い所でもあるのか?」
「違うもん!!...痛いけど......お兄ちゃんが僕のせいで痛いから......僕が悪いんでしょ........うっ....え...ごめんなさいぃ.....」
「!...な、泣くな...クソ、怪我してねえなら泣くな!...我慢しろ!」
「..ひ..っく.....お兄ちゃんは泣かないの...?」
「...泣かねえよ」
「...なら、僕も泣かないもん......く、くみちゃんが、泣き虫は嫌いだって、ゆってたから......ひっく...」
「...はぁ?何だそれ......つうか涙出てんぞ」
「泣いてないもん!!お兄ちゃん嘘つき!」
「嘘っ.........あー......もういいから......無事ならどっか行け。もう帰るから」
「本当に泣いてないもん!!...お兄ちゃんの嘘つき!!」
そう吐き捨てた子どもは、俺を押しのけ走り去って行った。
子どもが見えなくなってから、何とか起き上がってみるが、思っていたより傷は深いらしくジクジクとした痛みが広がる。
膝をつきかけた所を既の所で堪え、何とか歩き出した。......気ぃ抜いたら意識飛びそうだが、歩けねえほどじゃ、ねえ、な。
集まってきた野次馬が救急車を呼ぼうと喚くのをシカトして、学園に戻るため歩き出した。
.........これだけの怪我で、轢き逃げだ。救急車なんて呼んだら警察も来る可能性が高い。.......警察が来るのは、親父の事も考えると正直よくはねぇよな。
.......警察に色々聞かれんのもマズイし.......そもそも、親父にこれを知られんのもマズイ、よな....
金もそんなに持ってないからタクシーを呼ぶ事もできず、俺はゆっくりゆっくりと学園へと向かった。
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