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親衛隊室には誰もいなかった。まあ、今まで俺以外のヤツが出入りしてんの見た事ないんだけどな。
とりあえず仕事をする事にした俺が、いつもの席でパソコンを開くと、それまで俺を黙って見つめていた真樹がゲームを始めた。
しばらく仕事を続けてみた。特に支障はなかった。まあ、少し痛むくらいだしな。
……つうか、そろそろアイツ教室に返さねえと俺まで怪しまれるんじゃ…
「た、大変です、鳴海様っ!」
俺が真樹を追い出そうとした途端、慌てた様子の親衛隊員が親衛隊室に駆け込んできた。
「あ、チワワくんじゃん。やほー」
「チワワ……?…あ、真樹様、こんにちは!」
真樹がいる事に気付き、律儀にも挨拶をしている。こんなヤツにする必要ないのにな。
「彰、今俺に対してひどい事考えなかった?」
「……で、どうしたのですか?」
「彰、無視?俺ステルスなの?」
横でぐちぐちうるさい真樹をちらちら気にする隊員。真樹はスルーしてとっとと用件言えや。
「それが……転校生…さん…を出せって表に怖い人達が来てて……一応門は閉まっているんですが……今にも入ってきてしまいそうで……ど……どうしたら…」
「……大丈夫です」
「…………え?」
「その人達を絶対にこの学園の中に入れさせたりしません。貴方達……いえ、学園を守るのが私の仕事ですから。貴方達には一切危害を加えさせたりしません。だから貴方は何も心配しなくていいんです。だから……ね?安心してください」
隊員があまりに怯えるので、安心させようと慣れない笑顔を浮かべてみた。真樹が困った時は笑えって言ってたしな。……慣れないから顔がひきつるが仕方がない。
「!!…………は、は…い…………」
「では、危険なので貴方はここにいてください。他の隊員への連絡は任せました。……真樹、行きますよ」
「で、でも……ちょっ、オイ!」
何か言いたげな真樹をシカトして、俺は親衛隊室から正門へ向かった。
...親父との契約だ。俺がいる限り、この学園は平和じゃないといけない。...じゃないと、俺は"鳴海"から逃れられない。
.............そのためにも。この学園に害をもたらすヤツは、どんな手段を使ってでも排除する。
「………………な、鳴海様って……あんなにカッコよかったっけ……?」
誰もいなくなった親衛隊室に一人残された隊員が小さな声で呟いた言葉は、俺には届かなかった。
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