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薔薇園に足を踏み入れた途端に広がる強い香りに思わず顔をしかめた。
いい香り……なんだろうが、俺自身花があんまり好きじゃない。だから、あまり好ましい香りではなかった。
「なあなあ、陸!こっちに青い薔薇があるぞ!凄い!」
浮かれたように四方八方に走り回る雪の後を必死に追いかける。
「おい、雪、あまり行くな、危な」
その時、誰かの気配を感じた。誰かが近づいてきているみたいな……
でも、誰が……?……考えを巡らせている間にもソイツは距離を詰めてきている。
足音が間近で止まった。咄嗟に音のした方を振り返る。
「おや……陸様までいらっしゃるなんて……これは、少し厄介ですかね」
姿を現したソイツがそう言って口角だけを上げて笑みを浮かべる。
爽やかな見た目とは裏腹な顔に浮かぶ歪んだ笑みには見覚えがある。いや、忘れる訳がない。
「っ!!!……お前…!!……何でお前がここにいる!?」
「僕が何故ここにいるか……?……ふふ、そんなの愚問ですよ。会長様がこの学園にいらっしゃるからに決まっているでしょう?会長様がいらっしゃる限り僕は何度でもここに帰ってきます」
そうだ、コイツは……思い出した、コイツは……!
「計画が少々狂ってしまいますが、まあ仕方ないですか……陸様、少しの無礼をお許しください」
「お前、何言っ」
「陸ッ!!!危ねぇッ!!!!!」
雪の声に咄嗟に後ろを振り返った。その瞬間、俺の意識は途絶えた。
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