害悪退治

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「鳴海……何で…………何で、お前がここに……」 「簡単に捕まった方がよくそんな事を仰いますね。……私が用があるのはそこの方です。………………ねぇ?前親衛隊隊長さん?」 「その名を僕から奪った貴方がよくものうのうと僕の前に顔が出せましたね…………現親衛隊隊長」 どちらも表情は変えないが、にらみ合いをしているかのようなピリッとした空気に変わり、思わず息を呑んだ。 「……いえ、貴方が最近刃物などを大量に購入した形跡がありましたから…………何か起こすのでは……と警戒していましてね」 「……相変わらず素晴らしい情報網だ……それで、貴方は……また僕の邪魔をするの?僕を……会長様の親衛隊隊長から引きずり下ろした時のように……?」 「貴方のやり方に不満を感じている方がいらっしゃいましたからね」 「……貴方だって似たようなものでしょう」 「ああ、そうですね」 コツコツと靴を鳴らしながら近づいてくる鳴海を警戒するように、夏宮が体を完全に鳴海に向けた。 「それ以上近づかないでくれるかな……?コイツがどうなるかわからないよ?」 夏宮に命令された男達が、雪の首筋にこれみよがしにカッターを押し当てるのを見て、背筋にゾッとしたものが走った。 「別に構いませんが」 「……は?」 「ですから、別に構いませんが。やりたければお好きにどうぞ?」 鳴海のそんな言葉に俺や雪だけでなく、夏宮達までもが呆気にとられる。 言葉に嘘はないとでも言うかのように、尚も近づいてくる鳴海に、夏宮は不愉快そうに顔をしかめた。 その間にも鳴海はぐんぐん歩き続け、最終的には俺達と夏宮達との間まで来た。
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