害悪退治

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一瞬反射的に鳴海に目をやると、鳴海が夏宮から見えないように後ろ手に何か合図を送ってくる。 ……まさか、これで縄を切って逃げろって事か……? ……何で鳴海がそこまでするのかわからなかった。 だって、アイツは俺が嫌いで、それに俺だってアイツが…… なのに、こんな所まで来て、俺達を…… 俺の足を押さえ込んでいる男も雪を挟む男も、どちらも鳴海に気をとられている。 ……まさか、コイツらや夏宮の気を引き付けるために、わざとあんな煽るような事を…… 一瞬頭にそんな考えが浮かぶが、今まで鳴海がやってきた事を思い出して、否定するように頭を振った。 ……そうだ、アイツは怜の親衛隊隊長で……制裁なんかもするし、最悪なヤツで…………でも、今…………いや…… もんもんとした思考を無理やり終了させ、気づかれないように押さえ込まれていない足でナイフを弾き、手の近くに飛ばした。 そして掴んだナイフでゆっくりと縄に切り込みを入れていく。 手探りで、しばらく悪戦苦闘した後、自由になった腕の感覚を確かめるように数回握りしめた。 あとは、雪を…… タイミングを見計らい、俺の足を押さえ込んでいる男の眉間に拳を叩き込む。 倒れこんだ男に気づいたヤツらがこちらを見るのと、雪を挟む男が警戒するように雪を床に押し付けるように押さえ込むのを見て、軽く舌打ちをした。 だが、そこから雪を押さえ込む男の背後に回り込み、頭を蹴り抜く。 雪の縄さえ切れば…………焦る気持ちをぐっと抑え、縄を切る事だけに集中した。
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