第1話

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僕は登校するためのバスを待っている。 かれこれバスが来る予定時刻から、10分は過ぎたかな。ぼんやりバス停のベンチに座りながら、いつもの事だからと気にはしていないけれど、腕時計に目がいく。今日の一時限目はなんだっけ、、、。 プシューっと、音がした。 「おいっす、透!早く乗れよ!」 「あ、わりぃ。おはよ。」 部活の肩掛けバックって、なんでこんなに重いんだ。中身をわかっていても、上の荷台に上げるのが朝は辛かったりする。 「今日も低血圧発揮してますなぁー。」 「え。あ、そうか?」 「そして、今日も天然発揮してますな、奥さん!」 「奥さんて、オジさんとかにしてよ。男なんだから。」 「そう突っ込む?!そこですか、透さん!」 何が面白いのかわからないけど、ケタケタ笑っているこの友人は、敦士。たぶん笑ってないと落ち着かない人種なんだろうな、と知り合って2週間、接し方がわかり始めた。 僕らを乗せたバスは、散った桜の上を転がって高校に走っていく。 この春、僕は実家を少し離れた高校に通うために一人暮らしを始めた。実家のある場所があまりにも田舎で、両親的にはそれなりの学校にいってほしいとのことだった。住み始めたアパートの大家が親戚なので、心配はあまりしていないみたいだ。用のない謎のメールが、母さんからよく届くようになったけど。 昨日は『ワンピースって漫画、面白いわね!(^o^)』と届いた。引っ越し作業の片付けをしながら、目について思いの外読みふけってしまったのであろう母さんの姿が、やたら物凄く浮かんだ。 好きなことの話なんか、小さい頃以来していないから妙に恥ずかしい。『色々ありがとう。』とだけ、返信しておこう。
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