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ドクドクと波打つ鼓動。
彼の心臓の音も耳に届くぐらいの至近距離。
顔をあげるととても優しい目が重なる……
それ以上、何も聞かないでくれて、そっと背中に回された細くて長い綺麗な手。
だから安心して、少しの間だけ目を閉じた……
心の動揺が沈んでいってくれるまで、そっとこの身を彼に預けた。
―――…
……数分後。
「――ありがとう」
「どういたしまして」
彼から離れると少し戸惑いながらそう呟いた。
すると返ってきた優しい言葉。
そして優しいその瞳。
何も聞かないでいてくれるだけで、この時私はどんなに救われたか分からない。
「とりあえず、アパートに入りましょう……」
彼はそう言って先に階段を上り始める。
その後を、私も急いで追った。
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