悪魔の法則

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「お姉さん着替えてきたらどうですか? 少し話もしたいんで」 “鍵はここに置いときますね” その言葉を付け足して、彼は居間の小さなテーブルの前に腰を下ろす。 テーブルの上で、鍵が金属音を鳴らした。 私は彼の言葉に軽く頷くと、自分の部屋に移動した。 そこでようやく自分のとった行動を振り返る。 いくら傷ついていたとしても、いくらありえないことが起こったとしても、私は何てことを彼にしてしまったんだろう…… 仮にも妹の彼氏だ。 自分から抱きついてしまうだなんて、姉として失格かもしれない。 だって…… この世に、絶対破っちゃいけない法則がある。 この世に、絶対傷つけちゃいけない人がいる。 それは家族、友達、同僚、上司……とにかく私と関わった人達全てだ。 その人達を傷つけては絶対に駄目だという法則がある。 「お姉さん。この世の中に破っちゃいけない法則なんてありませんよ?」 ……いきなり突如耳に入ってきたそんな声。 その声に視線を向けると、部屋のドアを背に腕組みしながらそこに立っている彼の姿が視界に飛び込んできた。
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