『赤い胸』3

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「裕子さんは客じゃないですよ。俺の雇い主じゃないっすか、そこは区別しないと。ルールってもんがあるんでね。でもいっか。裕子さんの事喋っちゃったのは喋っちゃったし、等価交換って事にしときましょ。簡単に言えば、その人はいわゆる引きこもりでね、一日中ネットいじっちゃってる人なんすよ。現実の海よりネットの海の方がいいって言ってさ。ま、変わり者には違いないんですけど、俺を信用してください。絶対大丈夫なんで」  そんな事を言われて信用できるわけがない。 龍二に少しばかりの信用を寄せたところで、その人に対する信用が裕子に生まれるはずもない。 だが、そこまで言う龍二にすぐに、無理よ、と裕子が言ったところでもう遅い。 知られてすでに動いているのだ。 だから裕子はこう思うしかない。 しかしその前にいくつか確認のための質問を龍二にぶつけた。 「……どこまで話したの?」 「男に復讐したい女の人がいるんですけど、ちょっとばかし協力してくんね? みたいな感じ」  軽い要請によく応じたものだ、と裕子は唖然とした。 おそらく今の口調そのままに言ったのだろう。 「ただの興味本位でその人は協力してくれたの?」 「まさか。俺と同じでどん引きしてましたよ。裕子さんに同情してました」  裕子は失笑した。 変わり者にも同情されるほど、自分は憐れなのだ、と。 「あ、今ネガティブにとりましたね? 駄目っすよ、良い風にとってください。すげぇ協力者得たんですから。これ調べてくれたのもそうですし、今も深く潜ってもらってるしでいい事尽くめだし」
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