『赤い胸』3

6/11
前へ
/40ページ
次へ
「……雌犬のケツに夢中で私が見えねぇとか、目ん玉二つも必要ねぇな。忘れたふりとかいつまでも続くと思うなよハゲ予備軍が」 「あっはっは! いいね、最高! 雅文ハゲてんの?」 「まだ生き残りの毛があるわ。超がつくほど気にしてんのよ、ふはっ」  本当にすっきりした。 清清しい気分に裕子も龍二につられ、笑ってしまった。 同じ皮肉でも、方法が違えば結果も違うのだ。 こんなにも楽しく笑える。 「ま、とにかく今も調べ中って事で。確認だけど、裕子さんは金で解決っての、どう思う?」  話を戻した龍二は、またパソコンのキーをかたかたと打っている。 変わり者が調べ中という事を一応は了承する事にした裕子は小さく頷いたが、また不可解な事を質問され、戸惑った。 「どういう意味?」 「慰謝料っす」 「慰謝料?」 「そう、とれるかもしれないですよ」  まさか、と裕子は戸惑いのまま驚いた。 ただの恋人関係で、婚約などはしていない。 それでもとれるのかもしれない、という事を裕子は知らなかった。 それにまず、慰謝料なんて考えにも及んでいない。 裕子よりもはるかに色んな事を龍二は知っている、調べているのだな、と感心した。 しかし裕子は、冗談ではない、とすぐに薄く笑ってみせた。 「金なんか自分で稼ぐ。いらないわ、そんなつまらない金」 「言うと思った。そんな簡単で安い払いで済すような事、させないよ。払ってくれたところで終わるような感じでもないでしょ、裕子さんにとって」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加