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けど、「あんまり美味くない」と突如聞こえた声に下げていた顔を上げた。
綻んでいた頬の筋肉は、明らかに引きつりを見せる。
「……刹那?」
理紗は、いきなり急変した彼の態度に戸惑いを隠せないみたいだ。
でも彼は至って冷静と言うのか、その表情は冷めているものの今度ははっきりもう一度言葉を口にした。
「だから不味いってぇーの」
彼のその一言で、もちろんこの場の空気も悪くなる。
プライドの高い理紗は、言葉を失いながらお弁当の味を確かめる。
「そうか? ただ刹那君の口に合わなかっただけじゃないか? 普通に美味いと思うけどなぁ?」
「みんなの味覚がおかしいんじゃないですか?」
せっかくの木綿先輩のフォローも台無し。
彼はそう言って席を立つと、何処かへ歩いて行った。
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