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記憶がないわけじゃないが、頭がスッキリして鮮明になってゆく。
同時に思い出す篤くんの温もりと寄りかかった時の感覚。
鼓動が速鳴りだし、顔が火照り出す。
---恥ずかしい。
あの時は酔っていたからできたけど、シラフに近い今は絶対に無理!
もし突っ込まれたら酔っていたということで逃げきろう---必死に言い訳を考えてしまった。
あんなの私じゃない……
あんな私は知らない……
自分の事なのにあの時の"私"は"私"ではなかった。
知らない誰かを見ているような感覚がする。
酔っていたせいか、どこか夢心地で現実味がないというか不思議な感じだったのを覚えている。
「あ!篤くんに謝ってないや」
吐きそうな私をトイレまで連れて行ってくれたことを思い出し、私は情けなさに脱力感に襲われる。
散々迷惑をかけた上に謝りの言葉も言えずに別れてしまった。
しかも篤くんは年下で謝ろうにもアドレスも交換していないし、もう会うこともないかもしれない。
中途半端な感じが何か嫌で気持ちがモヤモヤして落ち着かなかった。
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