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意気込む理恵の後を追うように私も化粧室を出る。
やっぱり理恵よりも私の方が緊張しているように見える。
理恵の勇気と決断力が私にも少しはあったらいいのにな、と思うが二十数年生きてきて今さら変わるわけもない。
それどころか年々弱くなっていっているようにも感じられる。
「こっちこっち」
理恵が店員を掴まえ席を聞こうとした矢先、店のざわつきに負けないくらいの聞き覚えのある元気な声が耳に飛び込んできた。
「あ、めっちゃ分かりやすい席に居るしー」
理恵が満面の笑みを溢しながら正志くんの居る席に駆け寄る。
さっきまでの緊張はどこにいったのかと聞きたくなるような理恵のはしゃぎぶりに呆気に取られてしまう。
「何突っ立ってるんだよ、座れよ」
呆然と立ち尽くす私に篤くんが笑いながら席を勧めてくれた。
「うん……」
会えたことの嬉しさと気恥ずかしさ、そして緊張感が一気に押し寄せてくる。
メールや電話では普通でいられるのに、こうして面と向かうと妙に緊張してしまう。
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