許されない想い

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 家に着く頃には全身ずぶ濡れで服が気持ち悪いくらいピタリと身体に張り付いていて靴の中も悲惨なことになっていた。  私の姿に驚いたお母さんに傘がなかったからと言ったら怒られてしまった。  だって上手い言い訳も見つからなかったし、それ以前にそんな余裕なんてなかった。  でも脱衣所でお母さんに渡されたバスタオルで身体を拭きながら鏡に映る雨で濡れた自分の姿に、やっと冷静さを取り戻すことができた。  これでよく電車に乗って帰ってきたなって自分でも呆れてしまった。 「お湯溜めたから入りなさいよ」  ドアから顔を覗かせ、お母さんの優しい言葉にせっかく止まった涙がまた溢れてくる。 「分かってる!」  涙が溢れないように……  泣いているのがバレないように……  私はわざと言葉強めに返し、慌ただしく浴室に入るとそのまま湯船に身体を沈めた。  ドアの向こうからブツブツ文句を溢しながら私の脱ぎ散らかしたままの服を集めてくれている影が映る。  何でだろう……  心が弱っているせいか、いつもなら何も感じないのに些細なことも今日はやけに胸に染みる。 .
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